けものフレンズ2を見た感想 なぜ評価が二極化しているのか


▲WARNING けものフレンズ2のネタバレが含まれています。
 まだ見ていなくて今後見る予定のある人は注意してください。





けものフレンズ2をリアタイで一話から最終話まで全て見ました。
先に自論を述べるとけものフレンズ2否定派です。率直に言って気に入らない。
けものフレンズ2に対する世論の評価も先日ニコニコアンケートでとても良かったが2.6%、良くなかったが95%近くとワースト1位を記録しています。




が、しかし。ツイッターで調べると普通にけものフレンズ2を楽しめたという人もいれば思っていたより悪くなかったっていうコメントもちらほら。
というか、めちゃクソっていう声と最高の二極化って言っていいレベルに分かれてます。
なぜ二極化しているのかもちょっと考えつつ、ひとまず私の感想から書き連ねていこうと思います。




■ピースが欠けているジグソーパズルのようなストーリー


けものフレンズ2は廃墟化した謎の施設で謎のカプセルによって眠らされていたキュルルが目覚める所から始まります。
キュルルには過去の記憶がなく、どうしてここにいてどうして眠らされていたのか一切覚えていません。唯一の手掛かりとなるのは同じカプセルの中に入っていたスケッチブックただ一つ。このスケッチブックを手掛かりに自分の家が分かるかもしれないという謎理論でジャパリパーク中を旅しながらスケッチブックに描かれた風景と似ている場所を探しに出かけます。


↑キュルル。キュピルではない。


右も左も分からないキュルルは、偶然遭遇したサーバルとカラカルの助けを借りながらジャパリパークを探索します。
このサーバルはけものフレンズ1でかばんちゃんと一緒に旅したあのサーバルと同じサーバルですが、過去になにか起きたのかかばんちゃんのことを忘れて(または思い出せない)います。

ジャパリパーク中を歩き回ってスケッチブックと同じ景色の場所を探しますが、どこも自分の家と思われし場所はありませんでした。(というかスケッチブックに描かれたイラストの殆どが景色とかの風景画なので野ざらしの場所来て「ここ僕の家じゃない」ってそりゃ当たり前でしょうっていいたくなる。
家探しをしてる最中、キュルルはジャパリパークに忍び寄る魔の手(セルリアンの活発化)について知り合うフレンズを通して知らされます。
度々「海のご機嫌が悪い」ということを聞かされ、実際アニメシーンでも非常に巨大な潜水艦のような影が海の中を泳ぎ回る描写があります。いわばこれが今作のラスボス的な奴だと視聴者に印象を与えます。同じようにビーストと呼ばれるいわばフレンズのなりぞこないについても道中知り、フレンズ、セルリアン関わらず目に入ったものを無作為に襲い掛かる一際凶悪な存在として描写されています。このラスボスセルリアンとビーストは道中何度も話に上がるので視聴者側も重要な要素として認識させられます。
作中終盤、海底火山の活動が活発化しセルリウムと呼ばれるセルリアンの元となるものが大量に噴出されてジャパリパーク中がセルリアンだらけとなります。

この時キュルルは家さがしのために海沿いにある・・・っていうか海の中にあるホテルに滞在していたのですが、先程の巨大な潜水艦のようなセルリアンが超音波を出して建物にダメージを与え崩壊が始まります。


海の中に立つホテル。

セルリアンに囲まれている中、道中出会ったフレンズが突如ホテルにテレポート。(まじでどうやってきた)次々と現れるセルリアンをワンパンでなぎ倒していき、カラカルとサーバルが盾になるといってキュルルだけ船に乗せてホテルから脱出させます。
しかし陸とホテルのど真ん中あたりで同じくビーストが屋根にテレポート。(こいつもマジでどうやってきた)キュルルが何かを思いついたようで船を引き換えさせます。そして船がもう一度ホテルにたどり着くと屋根に乗っていたビーストがホテルへ飛び移り、セルリアンを排除・・・と、排除と同時にフレンズにも襲いかかります。
それと同時にホテルの崩壊が始まり、フレンズはキュルルが乗っていた船に全員乗って脱出。一方ビーストはそのまま動かずホテルと一緒に押しつぶされます。(その後生きているのか死んでいるのかは不明ですが大怪我は避けられないでしょう)
崩壊したホテルを前にキュルル「もう家さがしはやめた。ここが僕の家なんだ」と宣言。そのまま僕たちの冒険はこれからだ!!→ジ・エンド

とにかく伏線というか「これどうなったんだよ」っていう物が多すぎます。
潜水艦のような巨大セルリアンのその後、ビーストの安否、なぜサーバルはかばんちゃんの事を忘れているのか、活発化した海底火山のその後について一切描写がなく、特に海底火山が沈静化していない以上、ジャパリパークの危機は継続したままです。

潜水艦のような巨大セルリアンも散々存在を仄めかしていた割には出番が超音波でホテルを崩していったぐらいで直接対決していないし排除もしていないので引き続き海は危険な状態。ビーストに至ってはセルリアン排除用に使い捨てとまで言えるほど残酷な最後を迎えていて1期にあった優しい世界が微塵も感じられません。
だがそんな物より1期を見ていた視聴者はサーバルがなぜかばんちゃんの事を忘れているのか。このあまりにも重要な部分ですら明かされず有耶無耶なまま終わるため見ている側のモヤモヤ感が非常にでかい。
けものフレンズ2のストーリーはあまりにも未回収すぎる要素が多すぎて、まるで全部のピースが入っていない欠陥品のジグソーパズルのようです。



---------------------

以下4/13に追記


■非難する者と擁護する者の価値観の違い

最近ツイッターでこういうのを見かけました。

けものフレンズ2。一部の人達が親の仇のごとく嫌ってる9話だけを見てみたんだけど、何の他愛もない子供向けアニメという印象。いい大人がこのアニメの機微なクオリティを云々しているのは滑稽でしかないと思う。君達、もうけもフレは卒業だ。ガンダムを見よう!

— 近藤笑真 (@sotincat) 2019年3月25日


ただの一般人が呟いたのであれば特に盛り上がることなくスルーされていたのでしょうが、どっかで連載している人らしく配慮のない呟きで絶賛炎上中の模様。けもフレ2の何が問題になっているかあまり理解していないこの人にポケットの中の戦争は悲しい物語だねとか絶対言わないでほしい。
この人に限らずけものフレンズを肯定する人はあるパターンが見受けられます。

【パターン1:子供向けアニメと主張している】

「けものフレンズ2は子供向けアニメだ。子供向けアニメなんだから細かい所を気にしても仕方がないだろう。」

けものフレンズは1期2期で絵柄こそ違うがどちらもゆるいデザインだし、進撃の巨人やワンピースみたいな激しいバトルアクションがある訳でもないのでぱっと身は子供向けのアニメに見える。
実際私もけものフレンズは子供も楽しめるような作り(少なくとも1期は)なので子供向けアニメという部分についてはあまり否定はしないです。ただ、最近の子供向けアニメを見ていない人ほどこの事を知らないのですが、ヒットしている子供向けアニメは総じて大人も楽しめる作りになっています。その代表例とも言えるアニメは妖怪ウォッチです。

妖怪ウォッチのターゲット層は子供です。それは紛うことなき事実です。
ただし妖怪ウォッチには子供は分からないけれど大人であれば分かるネタが随所に散らばっているのが特徴(らしい)です。
例えば妖怪ウォッチの世界には妖怪ウォッチと呼ばれる腕時計があるのですが、その腕時計のプレゼンテーションの仕方が大きなスクリーンを背に一言。「これが妖怪ウォッチです。」
そのプレゼン法。完全にスティーブジョブスのパロディです。


↑スティーブジョブスのパロディ。どことなくジョブスに似てなくもない・・・。
その他パロディの元ネタをまとめてる情報はこちら→https://matome.naver.jp/odai/2142594277384098601(タップで移動
子供にはわかりませんが大人にはわかるパロディが多いです。


私は過去にテレビで妖怪ウォッチを制作している担当の人が「子供向けアニメなのは確かだけど、ただ子供向けに作ると大人がついてこない(これない)。なるべく大人の人たちも楽しめるようなアニメにしたいと考えた」っていう特集を見たことがあります。(そのソースを探そうとしたんですがちょっと見つかりませんでした・・・すいません。
実際妖怪ウォッチはヒット。大人も楽しめる作品として評価されました。(今ではポケモンに逆襲食らって下火ですが・・・)

では、けものフレンズはどうでしょうか。1期は一見NHK教育番組で流れてそうな子供向けのアニメに見えますが、1話〜6話でかつてそこは人間が存在していたことを仄めかし、更に4話のツチノコの「まだ絶滅していなかったのか」の一言でダークな部分が顔をのぞかせます。
幼児から小学生低学年くらいまではただキャラクターが可愛いとか映像作品として楽しむ一方で大人たちは見た目にそぐわない不穏な設定に思わず興味を惹かれる作りとなっているわけです。
一方の2期では大人が先を見たくなる、興味を惹かれる設定が見当たりせん・・・いや、見当たったのですが、ガン無視されました。第一話では廃墟と化した建物にキュルルが眠るカプセルが置かれており、その草臥れた施設から第一期と同じような何かしらの推察が入る余地が与えられています。


崩れた施設で目覚めるキュルル。この建物に限らずこの後乗るモノレールは窓ガラスにヒビが入っていたり鉄が錆びていたりと第一期同様不穏な気配が見え隠れしていた。

第一期を見たことある人ならそれだけでこの後の展開にわくわく(したかったのだが後述の場外乱闘が激しくて集中出来た人は少なそう)するでしょうし、知らない人なら「え?けものフレンズ2ってこんなダークな始まりなの?」って思うかもしれません。
正直第一話までは掴みはそんなに悪くなかったとは思うんですが・・・問題はこの後でした。
なぜキュルルはあの建物で目覚めたのか。スケッチブックに描かれている絵はどんなタイミングや状況で描いていて、なぜそれだけが残されていたのか。そしてキュルルの目指す家はどういうところだったのか、大人なら気になる色んな謎が何一つ解明されずに物語は終わってしまいました。察出来る大人や青年を楽しませる作りになっていないです。(謎に限らず、キュルルの意味不明な叡智タイムでフレンズたちが「おぉ」ってなるシーンなんかはもう出来の悪いなろう系そのもの。見ててイラッとするぐらいでした。

「じゃー子供向けは大人も必ず楽しめる作品にしなきゃいけないのか!」っと思うような人もいるかもしれませんが、流石にアンパンマンだとかしまじろうとかまでが大人も楽しめる作品にしろとは言いません。むしろあれは子供向けアニメを通り越して児童向けアニメです。お母さんの代わりに赤ちゃんの子守をするものだと思ってます。そしてアンパンマン、しまじろうがけものフレンズ2期とは同等のアニメかって言われるとこれまた違うと思います。
1期までは大人も一緒に楽しめるつくりだったのだから「子供向けアニメだから気にするんじゃない」って軽く一蹴してはほしくなかったです。もし監督やら広報やらが「けものフレンズ2はアンパンマンを見るような子達をターゲットにして作りました!」って言ったのなら、もしかしたらここまで炎上はしなかったかもしれません。だってけものフレンズ2は大人や青年が見ても楽しめる作品だと思って見ていた訳ですからね。何も知らずに「子供向けアニメ」と主張してる人は1期という背景をよくご存知でないのでしょう。「子供向けアニメだから」という言葉はけものフレンズ2に対しては免罪符にならないと思っています。


【パターン2:けものフレンズ1期を見ていない】

けものフレンズ2がどうしてこんなにも炎上しているのかというと1期という社会現象にもなった作品を見たことで2期に対する評価も膨らんでいたという要素もあったと思います。上で前述した通りけものフレンズ2は大人、青年が楽しめる作りになっていません。率直に言って物語そのものはかなり雑です。2期は1期を見た人なら必ず比較対象にされるでしょう。
その2期が1期と比較したらありえない展開が続くので当然文句の声が上がります。しかし1期を見ていない人たちには比較対象がない、あったとしてもやはりイメージ上の子供向けアニメと同列に扱っていると思われます。1期を見てない人たちからにはイヌイエの件で騒いでる人たちを見て「じゃぁアンパンマンとバイキンマンは手を取り合っていないから問題なシーンなのか」程度に思っているかもしれません。
1期を見てない人たちは何が問題なのか理解出来ないので、9話を見た時それほど問題には感じない=擁護側に回っちゃうのでしょう。(現に先程の貼り付けたツイートの人は1期を見ていない御様子。


上記パターンから考察するに、けものフレンズ2を肯定する者の根底には「けものフレンズ2は子供向けアニメであり、大人や青年は本来対象ではない」と思っていると思われます。そしてけものフレンズ2を非難シているものは逆に「けものフレンズ2は青年、大人も楽しめる作りにしていたと思っていたのにそうでなかった。そして楽しめる作りだと思っていた根拠は1期がそうだったから」っという根底部分のズレがあるからだと推察します。






(続く)

戻る